2020年1月13日付で、ニュージーランドの改正商標法が施行されましたので、実務上影響がありそうな点についてお知らせします。
1)商標権の更新_グレースピリオド(猶予期間)の期間短縮
商標権の更新について、期限までに手続きができなかった場合に、多くの国でグレースピリオド(猶予期間)が設けられています。このグレースピリオド内であれば、期限を過ぎた後であっても、更新手続きを行うことができるのです。
ニュージーランドの更新のグレースピリオドは12カ月と長めでしたが、日本と同様に6ヶ月となりましたので、ご注意ください。
更新期限までに手続きが行われなかった登録は、「満了した登録」として登録原簿に残り、グレースピリオドの期間内に更新手続きが行われなかった場合に、登録原簿から削除されます。一方、グレースピリオド中に手続きが行われた場合は、継続して存続していたものとみなされます。
グレースピリオド期間中の商標権であっても、譲渡したり、不使用による取消を請求したりすることができます。そのため、更新されなかった他人の登録が出願の障害になっている場合は、選択肢として考慮することができますが、グレースピリオドが6ヶ月となりましたので、6ヶ月経過するのを待つ方が現実的かもしれません。
また、グレースピリオド中に更新された場合に、商標権の侵害にあたる行為は、グレースピリオド中に行われたとしても許されません。そのため、グレースピリオド期間中の案件まで含めて調査を行い、使用の可否を検討する必要があります。
2)不使用による取消_知的財産局局長の裁量による取消回避の規定廃止
商標は使用して初めて価値が生じるものですので、多くの国で不使用状態にある商標権の取消制度が設けられており、主に出願商標の障害となっている他人の商標権を取り消すために利用されています。
不使用と判断される基準は国によって異なりますが、ニュージーランドでは登録商標を3年以上使用していないと、登録が取り消される可能性があります。不使用による取消が請求された場合の立証責任は、日本と同様に商標権者側にあり、取消が請求された商品・役務について使用を立証するか、商標権者がコントロールできない事情により使用が不可能であったことを示す証拠を提出する必要があります。
以前は、商標権者が立証責任を果たせなかった場合であっても、知的財産局の局長の裁量で取り消しが回避される可能性がありました。例えば、取消が請求された商品・役務ではないものの、関連する商品・役務に使用している場合などに取り消しを免れることがあったのです。
今般の改正により、そのような知的財産局局長による裁量の規定は削除されました。裁量により取消を免れる場合があるとなると、事前の使用調査をしたとしても、不使用により取り消せるのか予測するのが難しかったのですが、今回の改正により他人の商標権を理由に拒絶された場合の検討がしやすくなると思います。
一方、ニュージーランドで商標権をお持ちの場合は、この機会に使用商標と使用商品・役務の見直しをされることをお勧めいたします。登録時とは異なる商品・役務について使用していて、重要商標について不使用による取消を請求されたというのは、よくある事例ですので、ご注意ください。
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