カナダの商標手続きについて、運用の変更がありましたので、カナダ知的財産局(CIPO)及び現地代理人から入手した情報をお知らせいたします。
今回、変更になったのは、カナダ知的財産局(CIPO)からの通知に対する応答期限の期間延長についての運用です。
1)オフィスアクション(OA)に関する応答期限の延長
カナダで商標登録出願し、オフィスアクション(OA)が通知された場合の、応答期間は6ヶ月です。
以前は、応答期限を自由に6ヶ月延長でき、特別な理由があれば、更に6ヶ月が延長の認められることもありました。
しかし、2020年1月17日以降に発行されたオフィスアクション(OA)については、一定の理由がある場合のみ、1回に限り、6ヶ月間の延長が認められることになりました。
延長手続きは応答期間内に行う必要があり、カナダ知的財産局(CIPO)へ料金の納付は不要です。
2020年1月17日以降に発行されたオフィスアクション(OA)について、延長が認められるのは、下記の場合となります。
①直前に代理人の変更があった場合
②疾病・事故・死亡・破産等の予期できない状態にある場合
③出願案件の権利の移転があった場合
④オフィスアクション(OA)の理由となっている引用商標が異議申立されている場合
⑤オフィスアクション(OA)の理由となっている引用商標が不使用による取消を
請求されている場合
⑥オフィスアクション(OA)の理由となっている引用商標がOfficial Markであり、
出願人がOfficial Markの権利者と同意交渉中の場合
***Official Markとは公的機関(public authority)により採択及び使用される記章,
紋章又は標章のことです。
⑦国際登録(マドリッドプロトコル)について、分割出願手続きを行っており、
WIPO国際事務局より通知を待っている場合
***2019年6月17日からカナダもマドリッドプロトコルに加盟しました。
⑧下記の実体的な理由により、拒絶されている場合
*識別力がないため登録不可
*他人の商標と混同を生じるため登録不可
*その他の不登録事由に該当するため登録不可
例:商標中に他人の氏名と同一のため登録不可、
他の言語で商品の普通名称を示す言葉のため登録不可、
Official markやオリンピック・パラリンピックマークの規定により登録不可、
地理的表示に該当するため登録不可 等
***2020年1月16日以前に、⑧を理由一度延長が認められているオフィスアクション
(OA)については、更に6ヶ月延長できるようです。
⑨識別力を証明するための証拠を収集している場合
***一度、⑧の理由で延長した後に、再度⑨を理由に延長することはできないので、
ご注意ください。
***2020年1月16日以前に、⑨を理由に1度延長が認められているオフィスアクション(OA)
については、更に6ヶ月延長できるようです。
識別力の問題や他人の商標との関係で拒絶された場合は、6ヶ月延長できるとのことですので、実務的にそれほど大きな影響はなさそうですが、指定商品又は役務の記載不備により通知を受けた場合は延長できませんので、注意が必要です。
外国出願は思わぬところで対応に時間がかかることがありますので、延長できる場合であっても、通知を受け取ったら、早めに準備をして、余裕をもって対応するように心がけると安心です。
2)ニース国際分類への書換通知への応答期限
カナダは、以前、いわゆる区分制度がなく、特に区分を指定せずに指定商品・指定役務を記載して出願していました。
しかし、2019年6月17日付の商標法改正に伴い、カナダもニース国際分類に従って指定商品・指定役務を記載することとなりました。それ以前の件については、区分が指定されないまま登録になっているわけですが、これについて指定商品・指定役務をニース国際分類に合わせて書き換えるようにカナダ知的財産局(CIPO)から通知が来る予定となっています。
この書換通知に対する応答期限は通知から6カ月です。この6ヶ月の通知内に書換手続きを行わなかった場合、再度、通知(第2通知)が発行されます。そして、この第2通知から2カ月以内に手続きを行わない場合は、登録が失効してしまいます。
この書換通知の期限について、最初の通知の期限内であれば、下記の場合に限り、6ヶ月の延長が可能です。(第2通知の期限内ではない点、ご注意ください。)また、延長手続きにはカナダ知的財産局(CIPO)に所定の手数料の支払いが必要になります。
①直前に代理人の変更があった場合
②疾病・事故・死亡・破産等の予期できない状態にある場合
③対象の登録について権利の移転があった場合
書換手続は指定商品・指定役務の数が多い場合、確認に時間がかかることがありますので、通知を受けたら、すぐに準備を始めることが重要です。
今回の運用改正は、期限内の応答を促し、手続期間を短縮することを目的として行われたようです。通知を受けた際には大変ですが、特にオフィスアクション(OA)が滞りなく処理されることは、権利者の方にとってもメリットが大きいように思います。
以上ですが、カナダの商標制度につき、ご不明な点がございましたら、ご連絡ください。
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